荒野の牧場

観た映画についてメモします。

『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』を観てほっこりした。

ドニー・イェンが特殊メイクによる肥満体型で素早い格闘術を見せるのと、元々大柄な体型で「デブゴン」という単語から一番に連想されるサモ・ハン・キンポーが激しいアクションをするのでは、やっぱり大きな違いがあると思う。
なので観る前はどうなるものかと少々懐疑的な姿勢でいた。

そんな中で意外と驚いたのは、ドラマ部分で太る過程を丁寧に順序立てて描写していたことだ。犯人逮捕時のトラブルで異動、婚約者と喧嘩して別れ、足の怪我…。いくつものゴタゴタで溜まった精神的なストレスは主人公を過食へと走らせる。怪我した当初のみと思われたやけ食いはいつの頃からかルーティンになり、結果的に彼を随分と太らせた。
肥満であることが彼の心中の悩みとそのまま重なるようなドラマパートとなっているのである。
そんな主人公が、自分は単なるトラブルメーカーなのかどうかの悩み、一度別れた彼女との関係がどうなるかなど、舞台を日本に移して描かれていく。
作品全体はコメディ映画としての軽さを重視していて適度に緩いのだが、主人公まわりの物語は結構印象に残った。

元恋人ともう一度話し合う為に居酒屋で酒を飲んでいると、緊急地震速報が鳴って地震が起きる場面がある。主人公が店内の人の無事を確かめる姿を見て、元恋人の彼女は、彼にとって刑事とは天職であることを悟り、むしろ自分から離れようとする。地震がよく起こる日本が舞台であるのを使って、このように想いのすれ違いを描くのが、自分には新鮮だった。

日本側からも幾人か日本人役者が出演。
渡辺哲がヤクザの組長を演じていたり、アクション方面では島津健太郎や三元雅芸が出ているのが良かった(島津氏はアクション中心の役者という訳でもないが、和製アクション映画のドラマを盛り上げる枠で出演しているので)。これは監督としてドニー・イェンと長年タッグを組み『るろうに剣心』シリーズでも活躍する、谷垣健治監督がいたからだろうか。弟子筋の園村健介監督の関わる映画によく出演する二人だ。
遠藤警部を演じる竹中直人、2000年代の日本のコメディでよく見かける竹中氏のキャラクターだったので、妙に懐かしい気持ちになった…というのは余談。でもこの作品の空気には合っていたような気がする。

また、アクションが非常に素晴らしい。
あらゆるものがいたるところで破壊されるのは気持ちが良いし、ドニー・イェンの動きはやっぱり凄い。
新宿歌舞伎町での集団戦アクションはその辺にあるものを使って倒すこともあってか、背景の街並みの作り物っぽさ(しかしあまり現実とかけ離れ過ぎてない感じもある)『龍が如く』を思い出した。もっと新宿の色々な場所で戦って欲しい気持ちもあったが、築地や東京タワーと場所を変えたアクションが観られたので良しとする。

ドニー・イェンの蹴り技、特にソバットは見ていて惚れ惚れする。スローで何度もじっくりと見せるのではなく、激しいアクションの連なりの中で僅かに映るからこそ、空中での重さと鋭さ、冴えが映える。
初詣の気分で拝ませていただいた。

観終わった後に微笑ましい気持ちで出られました。

※イップ・マンは3作目が特に好きですが、貼るのは去年の新作。同じく蹴り技の貴公子ことスコット・アドキンスが頑張っています。

イップ・マン 完結(字幕版)

イップ・マン 完結(字幕版)

  • 発売日: 2020/11/18
  • メディア: Prime Video